土田研究室の研究内容

 当研究室では、準剛体回転流を用いた微粒子の新しい分級方式について、実験数値解析により研究を行っています。

準剛体回転流とは

 「準剛体回転流」とは、剛体回転している流れの一部にある変化(微小な貫流や回転差)を与えたときにできる「剛体回転」から微妙にずれた流れです。例えば、右図の地軸を回転軸とする地球において、地球の回転 とは違う動きをしている地球大気や海洋、または、回転容器内において剛体回転している液体を棒などで少しかき混ぜたときにできる流れなどがあります。準剛体回転流は主に地球物理学の分野で研究されている乱れのない回転成層流であり、この流れを分級に応用することでブラウン運動スケールの超微粒子まで原理的に分級可能となります。


分級とは

 ITの先端技術の発展を支えるIC基板や液晶ディスプレイ材料の高性能化のために、その原料粉体粒度の均一化およびサブミクロン化が要求されています。そこで、流体中で分ける化学成分や粒子径,形状などにより物質を分類する操作である「分級」 技術が重要となっています。当研究室では同じ密度をもつ粒子を粒子径による分類(粒度分級)を遠心力差で分級する遠心力分級を用いています。
 分級装置は高速一体回転するコアとハウジングで構成されています。その間に微少の貫流(水)を流すことにより、内部の流れ場を準剛体回転流とします。準剛体回転流は、右下の図のように、水色の部分はハウジングと同じ速度で流体が回転している
剛体領域、赤色の部分は回転軸に対して平行な壁面近傍に形成される境界層のスチュワートソン層、緑色の部分は回転軸に対して角度をもった壁面近傍に形成される境界層のエクマン層、その間のオレンジの部分は内部領域から構成されています。

 現在当研究室では精密分級においてトップクラスの分級精度が得られています。しかしながら、時間当たりの処理量が少ないという問題もあります。そこで工業化を目的に、今後処理量を増大し、より効率的な多産物分級機の開発を目指しています。

 

主な研究テーマ

実験

*       単段分級装置における分級方式の研究

 単段分級方式では実験により分級に関する基礎的研究を行っています.現在考えられている研究内容としては最も分級性能がよくなる最適なコア形状を考察するため,コア形状が及ぼす分級性能への影響の考察,処理量UPを目指して懸濁液濃度による分級性能の評価,粉産物を連続的に抽出する単段連続式分級方式による分級性能の評価といったことが挙げられます.

 

 

*       二段分級方式における分級方式の研究

 何種類もの粉産物の捕集を目指した多段分級の基礎的研究を二段分級装置での実験により行っています。また二段分級装置では処理量の増大をねらって、一段目、二段目のハウジングに抽出口を設け得られた粉産物の連続抽出を可能にしています。さらには一段目、二段目のコア比を変化させあらゆるコア比での分級性能を予測するスケール則を明らかにしていきます。

数値解析

*       高精度分級装置の壁形状が性能に及ぼす影響

 現在の分級装置の問題点である処理効率の低さを改善するために提案された貫流として水を用いない高効率分級方式に関しての数値解析での分級性能の評価を行っています.この分級方式に関しては基礎研究として単純な円板・円柱形状での数値解析が行われているので本研究ではより実機に近い形状を考え,またコア壁面を曲面にすることによるエクマン層での分級作用を考慮した分級性能の評価を行うことを目的とし, また本方式の最適形状での分級装置による分級実験も視野に入れています。

*       分級方式の粒子軌道に関する研究

 分級性能を評価する部分分級効率は粒子軌道より算出されます。そこで正確な部分分級効率を求めるためには正確な粒子軌道の計算が必要とされます。しかし現段階では粒子の運動方程式におけるサフマン揚力、回転揚力はオーダ比較により無視されています。そこでその近似の妥当性を確かめるために実際にサフマン揚力、回転揚力の影響を数値シミュレーションにより確かめる予定です。

*       スチュワートソン層流れにおける理論的考察

 準剛体回転流を用いた湿式分級方式では,主な分級場はスチュワートソン層です.したがって,分級精度を左右するのはスチュワートソン層の流れ特性であり,これを明らかにすることが重要となります.しかしながら,スチュワートソン層の理論的な解析は十分な結果を得るまでには至っていません.そこで,本研究ではスチュワートソン層に対し数値解析を行うとともに,その結果を基に数値解と導出した線形理論解(近似解)を比較することにより,線形理論解について検証を行っています.

*       二段分級装置の数値解析による性能評価

Ben9

過去の論文テーマ

H23年度 
修士論文 

*       準剛体回転流を用いた新方式湿式分級装置の開発

*       準剛体回転流を用いた高精度分級方式の高処理量化に関する研究

卒業論文

*       スチュワートソン層流れの理論的研究

*       準剛体回転流を用いた分級方式における高処理量化のための粉体供給方法の実験的考察

*       準剛体回転流を用いた高精度分級方式の高処理量化に関する研究

*       準剛体回転流を用いた半径方向内向き給水を伴う単段分級方式の開発

*       準剛体回転流を用いた 階段状流れ場をもつ四産物分級方式の数値的性能評価

 

H22年度 
修士論文 

*       準剛体回転流を用いた分級方式の高処理量化に関する実験的考察

*       準剛体回転流を用いた三産物分級方式の性能に関するスケール則の数値的研究

卒業論文

*       準剛体回転流を用いた単段分級方式での高流量化に伴う精度低下を抑える装置入口形状の考察

*       準剛体回転流を用いた高処理量分級における多産物化による性能変化の研究

*       準剛体回転流を用いた高処理量型四産物分級方式の性能に及ぼす段付きコアの影響

 

H21年度 
修士論文 

*       準剛体回転流を用いた分級方式における高精度化と高処理量化に関する研究

*       準剛体回転流を用いた高処理量型三産物分級方式の性能の最適化とスケール則

*       微粒子分級場としての準剛体回転流に関する流れ解析と粒子運動解析

卒業論文

*       準剛体回転流を用いた単段分級方式における高流量化による高処理量化の実験的研究

*       準剛体回転流を用いた単段分級方式における高濃度化による高処理量化の実験的研究

*       準剛体回転流を用いた三産物分級方式の性能に及ぼす追加スチュワートソン層の影響

*       準剛体回転流を用いた三産物分級装置の性能に関するスケール則

*       ステップ形状の回転壁に生じるスチュワートソン境界層流れの数値的・理論的研究

Ben9


H20年度 
修士論文 

*       準剛体回転流を用いた三産物分級方式の実験的性能評価

卒業論文

*       準剛体回転流を用いた単段分級方式における高処理量化の実験的研究

*       準剛体回転流を用いた三産物分級方式の性能に及ぼす流量配分の非対称性の影響

*       貫流によってステップ部に発達するスチュワートソン層流れの線形理論解の検証


H19年度 
修士論文 

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卒業論文

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H18年度 
修士論文 

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卒業論文

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H17年度 
修士論文 

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卒業論文

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H16年度 
修士論文 

*       エクマン層とスチュワートソン層での微粒子運動の統計的研究

*       微粒子分級における重力の影響を考慮したスケール則

*       準剛体回転流を用いた二段分級方式の実験的研究

卒業論文

*       エクマン層とスチュワートソン層での微粒子運動の統計的研究

*       微粒子分級における重力の影響を考慮したスケール則

*       準剛体回転流を用いた二段分級方式の数値解析による性能評価


H15年度 
修士論文

*       準剛体回転流を用いた高効率分級方式の研究

*       スチュワートソン層流れの数値的・理論的研究

卒業論文

*       準剛体回転流を用いた高効率分級方式の研究

*       準剛体回転流を用いた二段分級方式の実験的研究

*       スチュワートソン層流れの数値的・理論的研究




 Last modified : Sat.Mar.20.2010